システムの保守費は何に払っているのか ── 月額の中身と、減らせる項目
2026.11.01 公開
保守の請求書は、たいてい1行です。「システム保守費 一式」。先月は何も頼んでいないのに、同じ金額が引き落とされる。減らしたいと思っても、どの行を削ればいいのか見えません。
リリース後にお金がかかること自体はシステムは作ったあとにお金がかかるに書きました。この記事はその先、月額の「一式」を5つにほどいて、減らせる項目と、減らすと別の形で戻ってくる項目を分けます。
「一式」をほどくと、5つになる
呼び方は会社で違いますが、月額の保守費の中身は、だいたい次の5つに分かれます。
| 項目 | 中身 | 何も頼まない月にも発生するか | |
|---|---|---|---|
| 1 | 実費 | サーバー、データベース、ドメイン、決済やメール配信などの外部サービスの利用料 | 発生する(使った量で変わる) |
| 2 | 監視と障害対応 | 止まっていないかを見続ける仕組みと、止まったときに直す人 | 発生する |
| 3 | 更新と安全対策 | ライブラリや基盤の更新、証明書の更新、脆弱性への対応 | 発生する |
| 4 | 問い合わせ対応 | 使い方の質問、操作ミスの復旧、権限の変更依頼 | 件数で変わる |
| 5 | 改善の時間 | 項目の追加、並び順の変更、小さな機能の追加 | 使った分だけ |
上の3つは、何も頼まなかった月にも発生します。下の2つは、使い方で増減します。請求書が1行だとこの5つが混ざって見えるので、「先月は何もしていないのに」という感覚になります。先に結論を書くと、減らせるのは1と4と5で、2と3は減らすと別の請求書になって戻ってきます。
1 実費 ── 減らせるが、見る場所は請求額ではない
サーバーやドメイン、外部サービスの利用料は、誰に頼んでも同じ実費ですが、減らせないわけではありません。見るのは「何に払っているかの一覧」です。
架空の想定例です。従業員30名の会社で内訳を出してもらったら、サーバーとデータベースで月8,000円、メール配信が月3,000円、地図が月2,000円、ファイル保管が月1,500円。このうち地図は、リリース前に「訪問先を地図で出したい」と話していた名残で、画面からは外したのに契約だけ残っていた。外部サービスは、使う機能が消えても契約が消えないことがあります。
もうひとつは、サーバーの大きさです。リリース直後は大きめにしていて、半年たって利用量が分かったら、ひとつ下で足りる。年に一度、実費の一覧を出してもらい、使っていない契約と大きすぎる契約がないかを見るだけで、実費が目に見えて減ることがあります。
一覧を出してもらうときは、名義も一緒に確認してください。開発会社の名義になっている外部サービスは、関係が終わったときに引き継ぎの手続きが要ります。この話は引き継げる状態で作っておく5つの条件の条件2に書きました。
2 監視と障害対応 ── 何も起きなかった月に払う理由
「先月は障害がなかったのだから、その分は払いたくない」。この気持ちは分かります。ただ、監視と障害対応の費用は、障害が起きた回数に対して払うものではありません。起きたときに誰かが気づいて動ける状態を、毎日保つことに対して払うものです。
この項目を削ると、何が起きるか。監視をやめると、止まったことに最初に気づくのは、朝一番に画面を開いた現場の人になります。障害対応の契約をやめると、気づいたあとに「誰に連絡するか」から始まります。頼める先を探し、直してもらうまでの間、業務は止まるか、紙に戻ります。削った月額より、止まった半日のほうが高くつくことが多いです。
削るのではなく、中身を確認する項目です。止まったことに気づく仕組みがあるのか、誰かが毎朝開いているだけなのか。気づいてから何時間以内に動くのか。夜間や休日はどうなるのか。ここが書かれていない保守契約は、監視の分を払っているのに監視されていない可能性があります。バックアップが「戻せる」かも同じタイミングで聞く項目で、聞き方は発注側が確認する6項目に書きました。
3 更新と安全対策 ── 削ると、半年後に別の請求書になる
使っているライブラリや基盤は、何もしなくても古くなります。脆弱性が見つかる、基盤のサポートが切れる、証明書の期限が来る。発注側からは何も起きていないように見えるので、いちばん削りたくなる項目です。
ただ、ここを削った場合の請求書は、半年から1年後に来ます。更新を止めたまま1年たつと、いざ更新しようとしたときに一度に全部を上げることになります。毎月1〜2時間で済んでいた更新が、まとめてやると数十時間になる、というケースが多いです。あるいは、取引先から「このシステムの安全対策はどうなっていますか」と聞かれたときに答えられない。
減らすなら、更新をやめるのではなく、頻度を決める形にしてください。毎月見るのか、四半期に一度まとめるのか。頻度を落とす分だけ一度の更新が重くなるので、どこまで落とせるかは開発会社と相談してください。
4 問い合わせ対応と 5 改善の時間 ── ここは減らせる
問い合わせはリリース直後に多く、3ヶ月もすると減ります。減らし方は2つ。社内に1人、最初に聞く人を決めること。そして、同じ質問が3回来たら、画面の文言を直すか、画面の中に説明を足すことです。
改善の時間は、いちばん分かりやすく減らせます。ただ、減らし方を間違えると、作ったものが使われなくなります。リリース直後の3ヶ月は要望が集中するので、ここで削ると、現場が紙に戻った箇所が直せないまま残ります。何から直すかは初回リリースのあと、何から直すかに書きました。減らすなら、4ヶ月目以降、要望が落ち着いてからです。
月の時間に上限がある契約では、使わなかった時間の扱い(翌月に繰り越せるか、消えるか)と、超えたときの単価を契約前に確認してください。月20時間でどのくらいの変更が収まるかは仕様変更が追加費用になる線引きに書いたので、ここでは繰り返しません。
減らせる項目と、減らすと危ない項目
| 項目 | 減らせるか | 減らすとどうなるか |
|---|---|---|
| 実費 | 減らせる | 使っていない契約と大きすぎるサーバーを年1回見直す |
| 監視と障害対応 | 減らさない | 止まったことに気づくのが現場になる |
| 更新と安全対策 | 頻度は相談 | やめると半年〜1年後にまとめて払う |
| 問い合わせ対応 | 減らせる | 社内の窓口と、画面側の直しで自然に減る |
| 改善の時間 | 減らせる | 最初の3ヶ月を過ぎてから。直後に削ると紙に戻った箇所が残る |
月額を半分にしたい、という相談を受けることがあります。先に見るのは、実費の一覧と、改善の時間の使われ方です。この2つで下がらなければ監視と更新を削る話になりますが、それは「保守をやめる」に近い判断です。止まったときに誰が動くかを社内で決めてからにしてください。
逆に、月額が安すぎる見積もりを見たときは、2と3が入っているかを聞いてください。「何かあったら連絡してください」だけの契約は、安いのではなく中身が違います。
ニカゲツの場合
ライトプランは月額20万円(税別)で、運用保守と月20時間分の改善が入っています。上の5つでいえば、2から5が月額の中です。1の実費をどう扱うかは案件で変わるので、契約のときに確認していただけます。何に何時間使ったかは毎月レポートでお出しするので、改善の時間を使わなかった月でも、2と3の作業が動いていることは見えるようにしています。
月額を見直したいときは、月1回の定例で言ってください。実費の一覧と、直近3ヶ月の時間の使われ方を並べて、どこが減らせるかを一緒に見ます。社内で引き取る、という結論でも構いません。
よくあるご質問
何も頼んでいない月にも保守費を払うのはなぜですか?
月額のうち、監視と障害対応、ライブラリや証明書の更新といった安全対策は、何も頼まなかった月にも動いているからです。監視は止まったときに誰かが気づいて動ける状態を毎日保つことへの費用で、障害が起きた回数に対して払うものではありません。更新も、使っているソフトウェアのほうが勝手に古くなるので、止めると半年から1年後にまとめて払うことになります。まずは請求書の内訳を出してもらってください。
保守費を減らしたいとき、どこから見ればよいですか?
先に見るのは、実費の一覧と、改善の時間の使われ方の2つです。実費は、使わなくなった外部サービスの契約が残っていないか、サーバーの大きさが利用量に対して大きすぎないかを年に1回見直すと減ることがあります。改善の時間は、リリース後3ヶ月を過ぎて要望が落ち着いてからなら減らせます。この2つで下がらなければ監視と更新を削る話になりますが、それは保守をやめるのに近い判断です。止まったときに誰が動くかを先に決めてください。
月額が安い保守契約は、何が違うのですか?
中身が違うことが多いです。「何かあったら連絡してください」だけの契約は、監視と、ライブラリなどの更新が入っていないことがあります。その場合、止まったことに最初に気づくのは現場の人で、気づいてから誰に頼むかを探すところから始まります。安い見積もりを見たときは、止まっていないかを誰がどう見ているか、更新は誰がいつやるか、気づいてから何時間以内に動くかの3つを聞いてください。答えが出てこなければ、安いのではなく入っていません。
作りたいものを、
ひとつだけ持ってきてください。
初回お打ち合わせは60分・オンライン可。画面構成のラフとお見積りまで費用はいただきません。
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