開発費の払い方 ── 着手金・分割・検収のタイミングを、月ごとの現金の動きで見る
2026.10.10 公開
「見積もりは分かりました。で、いつ、いくらずつ払うんですか」。稟議が通ったあと、経理から戻ってくる質問です。見積書には総額しか書いていないことが多く、担当者はここで初めて、契約書を探しに行きます。
契約書のどの条文を読むかはシステム開発の契約書で、発注側が読むべき5つの場所に書きました。この記事はその手前で、現金がいつ、いくら動くかを月単位で見ます。条文の話ではなく、資金繰りの話です。
払い方は、だいたい4つの型のどれか
開発会社から出てくる払い方は、たいてい次のどれかです。どれが普通かは会社の規模や契約の型で変わるので、どれが正しいという話ではありません。
| 型 | 契約時 | 開発中 | 検収後 | 発注側から見た性格 |
|---|---|---|---|---|
| 検収後に一括 | 0 | 0 | 全額 | 出金は遅いが、一度に大きい |
| 着手金+残金 | 2〜5割 | 0 | 残り | いちばんよく見る形 |
| 3分割 | 3割前後 | 中間で3割前後 | 残り | 長い案件で出金をならす |
| 月ごとの精算 | 0 | 毎月、稼働分 | ── | 準委任に多い。総額が動く |
架空の想定例で並べます。300万円の開発を3ヶ月で進める場合、検収後に一括なら、4ヶ月目に300万円が一度に出ていきます。着手金3割なら、契約月に90万円、4ヶ月目に210万円。月ごとの精算なら、毎月100万円前後が3回ですが、稼働が増えれば総額も増えます。
総額は同じでも、出ていく月と一度に出る額が違う。経理が知りたいのはここです。
月ごとの精算だけ性格が違います。他の3つは請負に近く、総額が先に決まっています。月ごとの精算は準委任に近く、その月に使った時間で請求が来るので、最後まで総額が確定しません。どちらが自社の進め方に合うかは、契約の型の話として先ほどの記事の1つ目に書いてあります。
検収とは何か、終わらないと何が起きるか
検収は、納品されたものを発注側が確認して「契約どおりに受け取りました」と通知することです。この通知が、残金の請求が立つ起点になります。
検収が終わらないと、何が起きるか。開発会社の側では、請求ができず、人件費を先に払った状態で待つことになります。発注側の側では、契約不適合責任の期間が始まらず、保守契約への切り替えも始まらないので、リリース直後の修正が「どの契約の話か」宙に浮きます。経理では、資産に計上する時期が決まりません。ここは税務の扱いが絡むので、税理士に確認してください。
検収が長引く原因は、相談を聞いていると3つに集約されます。
確認する人が決まっていない。担当者が忙しくて画面を触る時間が取れず、検収期間が過ぎていく。合否を判断する基準がない。「満足したら」では終わりません。そして、使ってみて出た要望を検収に混ぜてしまう。
3つ目がいちばん多いです。検収は、契約どおりに動くかを確認する場で、使いやすいかを議論する場ではありません。「一覧の並び順を変えたい」は要望であって、不合格の理由ではない。ここを分けないと、要望が出るたびに検収が延び、残金の支払いも延び、開発会社との関係が悪くなります。
検収を短くしたいなら、開発中に画面を見ておくことです。8週目に初めて動くものを見ると、そこで気づくことが全部、検収に乗ります。
資金繰りの側から見ると、見る場所は3つ
経理や社長が見ているのは、総額ではありません。次の3つです。
最大の出金額と、それが何月か。検収後一括なら、その月に全額が出ます。賞与の月や、決算月、他の大きな支払いと重なっていないか。ここが重なると、総額が妥当でも稟議が通りません。
出金から、効果が出るまでの月数。払ってから使い始めるまでに3ヶ月空くのか、翌月から使えるのか。稟議で「やらなかった場合にいくら失うか」を書くときの分母がここで決まります。稟議に書く数字の並べ方はシステム開発の社内稟議、何を書けば通るかに書きました。
補助金や借入を前提にしているか。補助金は後払いなので、全額を先に自社で払います。この点はシステム開発に使える補助金に書いたとおりで、入金の時期は読めません。借入やリースで払う場合の組み立ては、この記事の範囲を超えます。税理士か、取引のある金融機関に相談してください。
ニカゲツの場合 ── 初期費用と月額
私たちの払い方は、初期費用と月額の2つです。初期費用は契約・着手時にいただきます。月額はリリース後の改善フェーズが始まってから、12ヶ月にわたって毎月です。支払いは銀行振込で、詳細は個別の契約書と請求書で定めます。
ライトプランを月ごとに並べると、こうなります。
| 時期 | 出金(税別) | 何の費用か |
|---|---|---|
| 契約・着手時 | 50万円 | 初期費用。設計〜実装〜テスト〜初回リリース、導入レクチャー |
| 開発中の2ヶ月 | 0 | ── |
| リリース後1〜12ヶ月目 | 毎月20万円 | 運用・保守と、月20時間までの改善 |
| 14ヶ月の合計 | 290万円 | 初期50万円+月額20万円×12 |
一度に出る最大額は、契約時の50万円です。あとは月20万円が12回続きます。資金繰りの表に載せるときは、初期費用を1回の出金、月額を12ヶ月の固定費として置いてください。月額の中身はシステムは作ったあとにお金がかかるに項目ごとに書いています。
検収については、案件ごとに契約書で定めるので、ここで一律のことは書けません。ただ、開発中は日次で動く画面を共有しているので、8週目に初めて見る、という形にはなりません。検収の場で初めて気づくことを減らす、という意味では、これが一番効いています。
正直に書いておくと、この払い方が合わない会社もあります。社内の規程で「検収後に一括払い」と決まっている会社は、初期費用を着手時に払う形が通らないことがあります。途中で月額をやめる場合も、残り月数分はお支払いいただく契約なので、12ヶ月を固定費として見込めない状況なら、向いていません。そこは料金のページに同じことを書いています。
経理に渡す表を、契約前に作る
ここまでを踏まえて、契約前にやることをひとつだけ挙げます。月ごとの出金表を作って、経理に渡すことです。
作り方は簡単で、見積書に「支払時期」の欄がなければ、開発会社に「この金額は、いつ、何回に分けて払いますか」と聞いて、書いてもらいます。それを月の列に置き、リリース後の月額やサーバー代も同じ表に足します。
ひとつ注意があります。請求書の日付と、実際の出金月はずれます。月末締め翌月末払いなら、4ヶ月目に検収した残金は5ヶ月目末に出ていく。自社の支払サイトに合わせて、表の列を1つずらしてください。
地味ですが、この表があると稟議が一度で通ります。
見積書を受け取ったときに聞く一文を、最後に置いておきます。「この金額は、いつ、何回に分けて払いますか」。即答できる会社は、資金繰りの側も考えて料金を組んでいます。
よくあるご質問
着手金は、払わないといけないものですか?
契約によります。検収後に一括で払う型の契約なら着手金はありませんし、着手金と残金に分ける型なら契約時に一部を払います。開発会社が着手金を求めるのは、開発中の人件費を先に持ち出しているためで、それ自体は不自然ではありません。確認するのは金額より、途中で中止になった場合に着手金がどう精算されるかです。契約書の中途解約の条項と合わせて読んでください。私たちの場合は、初期費用を契約・着手時にいただく形です。
検収が終わらないうちは、支払いを止めてよいのですか?
契約書に検収後払いと書いてあれば、検収が終わるまで残金の支払い義務は発生しません。ただし、検収期間内に合否を通知しないとみなし検収になる条項が入っていることが多く、放置は「止める」ことにはなりません。検収を長引かせる理由が「使ってみて出た要望」なら、それは検収ではなく改善の話です。契約どおりかを確認して検収を終え、要望は別の枠で扱うほうが、双方にとって早く進みます。
ニカゲツの月額は、途中でやめられますか?
リリース後12ヶ月の改善フェーズが基本契約で、途中で解約する場合も残り月数分の月額はお支払いいただく形です。初期費用を抑えた料金設計が、この12ヶ月を前提にしているためです。資金繰りの側から見ると、月額は12ヶ月固定の出金として扱ってください。満了後の更新と解約は自由で、ソースコードとデータはお手元に残ります。料金のページにも同じことを書いています。
作りたいものを、
ひとつだけ持ってきてください。
初回お打ち合わせは60分・オンライン可。画面構成のラフとお見積りまで費用はいただきません。
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