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既存システムから乗り換えるとき ── データ移行で実際に時間がかかるところ

2026.10.02 公開 / 2026.10.08 更新

データ移行のご相談を受けると、たいてい「変換が大変そう」という話から始まります。

正直に言うと、変換そのものはあまり大変ではありません。CSVを読んで、列を突き合わせて、新しい形に入れる。ここは半日から1日で終わります。実際に時間を食うのは、その前の「決める作業」です。

どのデータを持ってきて、どれを捨てるか。同じものを指しているのか別物なのか。この判断は社外の人間にはできません。だから移行の期間は、こちらの作業時間ではなく、御社側の判断が終わるまでの時間で決まります。

時間を食うのは、この5つ

実際の相談で必ず出てくるものを並べます。どれも地味です。

1. 同じ取引先が、表記ゆれで3件に分かれている

「株式会社山田商事」「(株)山田商事」「山田商事」。人間が見れば同じですが、システムは別の3社として扱います。新しいシステムで取引先ごとの集計を出したいなら、ここを寄せないと数字が合いません。

寄せる作業自体は機械でもある程度できます。ただ、最後は人が見ます。「山田商事」と「山田商事株式会社」が本当に同じ会社かは、こちらには分かりません。500件のマスタなら、目視で1日仕事です。

2. 退職者や解約済みの顧客のデータをどうするか

過去の伝票には、もう在籍していない担当者の名前が入っています。削除すると伝票の履歴が壊れ、残すと選択肢の一覧に出てきて現場が混乱します。

答えは「残すが、新規では選べなくする」です。ただ、この方針を決めるのに打ち合わせが1回要ります。個人情報の保存期間の話も絡むので、総務や法務に確認が要ることもあります。

3. 過去何年分を持ってくるか

ここが一番割れます。現場は「全部あったほうが安心」と言い、実際に検索するのは直近3ヶ月だけ、ということがよくあります。

4. 紙にしか存在しない情報

これは架空の想定例ですが、契約書の特記事項がファイルに綴じてあるだけ、というケースを考えてみてください。システムには単価しか入っていないのに、実際の請求はその特記事項を見て手で調整している。移行しようとして初めて、紙を見ないと業務が回らないことが分かります。

この場合、紙を全部入力するのか、当面は紙を見続けるのかを決める必要があります。入力するなら、誰が、いつやるのか。8週間の中で発注側にどれだけの時間が取れるかは2ヶ月で作れるもの、作れないものの工程と突き合わせて考えます。

5. システムに載っていない例外運用

「この取引先だけ締め日が違う」「この商品だけ単価表を使わない」。既存システムでは対応できず、担当者が覚えて手で処理している。移行というより、設計に直結する話です。

この5つは、どれも技術の問題ではありません。全部、決める作業です。

移行を5段階に分ける

データ移行の5段階を横に並べた図。棚卸し、取捨の判断、変換ルール、試験移行、本移行。2段目の取捨の判断に一番時間がかかる
手を動かす時間より、決める時間のほうが長くなります。2段目で止まる案件が多いです。

進め方は、いつもこの順番です。

段階やること主に動く人
1. 棚卸しいま持っているデータを一覧にする。件数と形式を数える開発側
2. 取捨の判断どれを持ってきて、どれを捨てるか決める発注側
3. 変換ルール表記ゆれの寄せ方、必須項目が空のときの扱いを決める両方
4. 試験移行一度入れてみて、現場の人に見てもらう両方
5. 本移行切替日を決めて入れ直し、並行運用に入る開発側

2段目で止まる案件が多いです。ここは開発側が代われません。かといって放っておくと3段目以降が全部ずれるので、W2の打ち合わせで必ず論点として出します。この判断にかける時間も、発注側の作業時間のうちです。8週間で発注側に何が発生するかは発注したあと、自分たちは何をするのかに週ごとの目安を書きました。

4段目の試験移行を飛ばしたくなることがありますが、飛ばさないでください。実データを入れると、たいてい何か出ます。桁数が想定より多い、同じ商品コードが2つある、金額がマイナスの行がある。ラフの段階では誰も気づきません。

全部持ってこない、という選択

いちばん強くおすすめするのがこれです。

新しいシステムに入れるのは、これから実際に使うデータだけにする。過去分は参照用にCSVかPDFで別に置いておく。必要になったらそこを見る。

この形にすると、作業量が一気に減ります。表記ゆれを寄せる対象も、判断が必要な例外も、直近分だけになるからです。5年分と1年分では、目視の量が5倍違います。

「過去を捨てるのは怖い」と言われます。捨てるわけではありません。別の場所に置くだけです。実際、移行後に過去データを見に行く頻度は、事前の想定よりかなり低いことが多いです。

法令で保存年限が決まっている書類も、保管の形さえ満たしていれば、新しいシステムの中に入っている必要はありません。ここは顧問の税理士に一度確認してください。

並行運用を、いつまでやるか

切り替えた瞬間に古いシステムを止めることは、まずありません。しばらく両方動かします。

期間の目安は2週間から1ヶ月です。決め方はシンプルで、月次の締めを1回通すこと。締めが問題なく終われば、その業務は新しいほうで回ると判断できます。

ここが厄介で、並行運用の間は二重入力になります。現場の負担が一時的に増えるので、期間は短いほどいい。「安心だからもう3ヶ月」と延ばすと、新しいシステムを使わない人が出てきて、結局移行が終わりません。

止める日を先に決めておくのが一番効きます。試験移行の時点で「◯月◯日に旧システムを閉じます」とアナウンスしておく。日付があると、みんな動きます。

どこからが「大規模データ移行」か

正直に書いておきます。大規模なデータ移行は、初期費用に含まれていません。決済、公的な本人確認、複雑な承認ルート、基幹システム連携と同じ扱いです。

では、どこからが大規模か。目安はこうです。

初期費用に含まれる別途お見積もり
マスタの件数数千件まで数万件以上
明細の件数数万件まで数十万件以上
元データの形CSV・Excelで取り出せる旧DBを直接読む、紙から入力する
移行元の数1〜2系統まで3系統以上を突き合わせる

件数と形式さえ分かれば、初回のお打ち合わせでどちらか判断できます。見積もりに何が含まれるかの考え方はMVP開発の費用は、何で決まるのかに書いています。

含まれない場合でも、やり方はあります。移行を初回リリースの対象から外して、まず新規データだけで動かす。運用が落ち着いてから、月額の稼働枠を使って少しずつ入れる。この進め方なら初期費用は動きません。枠の使い方は運用・保守の中身を項目ごとにを見てください。

最初の打ち合わせに、持ってきてほしいもの

移行が絡む相談のときは、これがあると話が早いです。

いま使っているシステムから、取引先マスタと直近1ヶ月の伝票をCSVで出せるか試してください。出せるかどうかを確認するのが目的です。出せないシステムは実在します。その場合は移行の難易度が一段上がるので、早めに分かったほうがいい。

あわせて件数をざっくり数えておいてください。取引先が何件、商品が何件、伝票が年間何件。桁が分かれば十分です。規模感の掴み方は業務システムの開発費用を、自分で見積もる方法にも書きました。

初回のお打ち合わせ(60分)のあと、3営業日以内に画面構成のラフと見積もりをお出しします。ここまで費用はかかりません。移行の範囲も、そのラフの中に線を引いてお出しします。先に手元を整理したい場合は、資料のページを見ていただくのでも構いません。

よくあるご質問

データ移行は初期費用に含まれますか?

標準的な範囲は含まれます。目安として、マスタが数千件まで、明細が数万件まで、元データがCSVやExcelで取り出せる状態であれば、初期費用の範囲に収まることが多いです。これを超える件数や、紙からの入力、古いシステムのデータベースを直接読み出す必要がある場合は、大規模データ移行として別途お見積もりになります。件数と形式が分かれば、その場でどちらか判断できます。

過去のデータは何年分持ってくればいいですか?

実際に使う分だけを新システムに入れて、それより古いものは参照用に別に置く方法をおすすめしています。直近1年分を移行し、それ以前はCSVかPDFで保管しておく形です。過去分を全部入れると、移行の手間だけでなく、日々の検索も遅くなります。法令で保存年限が決まっている書類は、保管の形さえ満たしていれば、新システムの中にある必要はありません。

移行中は古いシステムを止める必要がありますか?

いいえ。しばらく両方を動かす並行運用の期間を取ります。目安は2週間から1ヶ月です。月次の締めがある業務なら、締めを1回通してから切り替えると判断がしやすくなります。並行運用の間は二重入力の手間が出るため、期間は短いほど現場が楽になります。いつ止めるかは、最初の締めが問題なく終わった時点で決めることが多いです。

作りたいものを、
ひとつだけ持ってきてください。

初回お打ち合わせは60分・オンライン可。画面構成のラフとお見積りまで費用はいただきません。

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「範囲と進め方を決める」の記事はガイドの一覧にまとめています。全25本を3つのテーマに分けて並べました。