小さな開発に提案依頼書(RFP)は要るか ── 代わりに用意するA4一枚
2026.10.30 公開
「提案依頼書を作ってから声をかけたほうがいいですか」。初回のお打ち合わせの前に、こう聞かれることがあります。検索して見つけたテンプレートを開いたら30ページあって、目次の段階で手が止まった、という話と一緒にです。
10〜20画面くらいの開発なら、その30ページは作らなくていいと私たちは考えています。ただし、何も用意しなくていいわけではありません。代わりにA4一枚を用意してください。この記事は、その一枚に何を書くかと、同じ一枚を複数社に渡して比べる方法の話です。
本格的なRFPが前提にしている規模
提案依頼書のテンプレートには、だいたい次の章が並んでいます。背景と目的、現行システムの構成、機能要件、性能や可用性といった非機能要件、データ移行、体制、スケジュール、評価の基準、契約条件。
これは、数千万円以上の開発を、複数の大きな会社に競わせて、選んだ理由を社内外に説明する必要がある場面の書類です。公的な調達や、大きな会社の情報システム部門が使うものとして育ってきました。章の多さは、比べる相手の多さと、説明する責任の重さから来ています。
10〜20画面の開発でこれを作ると、負担と効果が釣り合いません。社内で数週間かけて機能要件を書いても、その多くは開発会社との最初の打ち合わせと画面のラフで書き直しになります。業務を知っているのは発注側で、それを画面に落とすのは開発側の仕事なので、先に発注側が機能を決め打ちすると、かえって提案の幅が狭くなります。準備しすぎなくていい理由は開発会社に相談する前に、決めておくと話が早い3つのことにも書きました。
それでも、何も渡さずに比べるのは難しい
一方で、書類なしで3社と話すと、別の問題が起きます。同じ説明をしたつもりでも、3回話せば3回違う話になるのです。
1社目では受注の話を中心にした。2社目では、話の流れで在庫のことも少し話した。3社目では予算を聞かれて、つい低めに答えた。そうすると、返ってくる提案は前提がばらばらになります。金額の差が、会社の差なのか、こちらが話した中身の差なのか、区別がつきません。
RFPがもともと解こうとしていたのは、この問題です。前提を揃えて、同じ条件で提案してもらうこと。小さな開発でも、この目的だけは残ります。だから厚い書類の代わりに、前提だけを揃える一枚を作ります。
A4一枚に書く6つ
書くのは次の6つです。架空の想定例を添えます。従業員20名ほどの資材卸で、受注を電話とFAXで受けている会社です。
| 項目 | 書くこと | 想定例 |
|---|---|---|
| 困っていること | 業務名と、何が起きているか | FAXと電話の注文を事務がExcelに打ち直し、月に数回、転記ミスで誤出荷が出る |
| 使う人 | 役割ごとの人数と、使う場所 | 事務2名がPCで入力、倉庫3名がスマホで出荷を確認、営業4名が一覧を見る |
| 今のやり方 | 使っている帳票、ファイル、流れ | Excelの受注表、Wordの出荷指示書。1日30件前後 |
| 予算の幅 | 初年度の総額で、下限と上限 | 初年度200万〜350万円。350万円を超えると稟議が難しい |
| 時期 | 使い始めたい時期と、その理由 | 3月の繁忙期の前に使い始めたい |
| やらないこと | 今回は入れないと決めたもの | 在庫管理と請求書の発行は今回は入れない。会計ソフトとの自動連携も不要 |
初めの5つは、開発会社に最初に送るメールに書く内容とほぼ同じです。一通目の書き方は開発会社への最初の一通に、何を書くかにまとめました。A4一枚との違いは、6つ目の「やらないこと」と、全社に同じものを渡すという使い方にあります。
やらないことを書いておくと、各社が範囲を勝手に広げたり狭めたりできなくなります。ある会社は在庫まで含めた提案を出し、別の会社は受注だけで出す、という食い違いが起きません。小さな開発ほど、何を入れないかで金額が大きく動きます。
予算は上限だけでなく、幅で書きます。上限だけを書くと、その金額に寄せた提案が並びやすくなります。幅で書いておくと、下限ならここまで、上限ならここまで、という提案の出し方をしてくれる会社が出てきます。
書かないもの、添えるもの
機能の一覧と画面の設計は書きません。「ログイン、検索、CSV出力、通知」と並べても、何の業務のためかが伝わらず、提案する側はそれを画面に落とせないからです。使う技術の指定も、社内の規程で決まっていない限り不要です。
代わりに、今のやり方で使っている紙やExcelを1〜2枚添えてください。顧客名や金額は消して構いません。欄の並びと、手で書き込まれている箇所が見えるだけで、提案の精度はかなり上がります。
この一枚は、社内の稟議にもそのまま使えます。決裁者が見たいのは、何に困っていて、いくらまでで、何をやらないのか、だからです。稟議書の側の書き方はシステム開発の社内稟議、何を書けば通るかにあります。
同じ一枚を、複数社に渡して比べる
使い方の決まりは2つだけです。全社に同じ一枚を渡すこと。打ち合わせで追加で話したことは、一枚に書き足して、他の会社にも同じ内容を送ること。片方の会社にだけ話した情報があると、そこで前提がずれます。
返ってきた提案は、次の表に書き写して並べます。
| 見ること | 見方 |
|---|---|
| 画面の一覧 | 何画面で、どの画面が入っているか。同じ業務で画面数が大きく違えば、その理由を聞く |
| やらないことへの反応 | 書いた範囲を守っているか。外した理由、足した理由が説明されているか |
| 1年目の総額 | 初期費用に、保守や改善の費用、サーバー代を足した12ヶ月分 |
| 返ってきた質問 | 今のやり方の欄に踏み込んだ質問があるか |
| 誰が作るか | 打ち合わせに出た人が設計と開発もするのか、別の人に引き継がれるのか |
金額の欄だけを見ると、画面数の違いを見落とします。安い提案が、実は倉庫の画面を入れていなかった、ということは珍しくありません。打ち合わせで聞くと差が出る質問は開発会社の選び方に5つ挙げたので、この表の最後の2行はそちらと合わせて使ってください。
本格的な提案依頼書が要る場合
A4一枚では足りない場合もあります。社内の規程で、選定の理由と評価の記録を書面で残すことが決まっている。業務が複数の部署にまたがり、40画面を超えそうだ。基幹システムとの連携が前提になっている。こうした条件があるなら、章立てのある提案依頼書を作る意味があります。
その場合も、A4一枚から始めるのがおすすめです。6つの項目は、提案依頼書の背景、目的、現状、予算、スケジュール、範囲の章の骨組みになります。一枚がまとまらないうちに30ページを書き始めると、章を埋めること自体が目的になりがちです。
私たちに渡していただく場合も、A4一枚で十分です。初回のお打ち合わせは60分で、3営業日以内に画面構成のラフとお見積りをお出しします。ここまで費用はいただきません。ラフには画面が1枚ずつ並ぶので、上の表の1行目にそのまま書き写せます。他社の提案と並べて判断していただくのが、いちばん確実だと思います。
よくあるご質問
提案依頼書がないと、複数社の見積もりは比べられませんか?
比べられます。比べられなくなる原因は、書類の厚さではなく、会社ごとに違う説明をしてしまうことです。困っていること、使う人、今のやり方、予算の幅、時期、やらないことの6つをA4一枚に書き、同じものを全社に渡せば、前提が揃います。返ってきた提案を、画面の一覧と1年目の総額で並べれば、10〜20画面の規模なら十分に判断できます。
予算の幅を書くと、その上限で見積もられてしまいませんか?
その心配から予算を伏せる方は多いです。ただ、予算がないと各社が別々の前提で範囲を決めるので、300万円の提案と1,000万円の提案が並んで比べられなくなります。上限ではなく幅で書き、その幅で何画面まで入るかを聞く形にすると、提案の中身で比べられます。画面数で料金が決まる会社なら、予算を書いても金額そのものは変わりません。
A4一枚は、誰が書けばいいですか?
その業務を毎日触っている担当者が下書きするのが一番正確です。管理職が書くと、今のやり方の欄が規程どおりの説明になり、実際の手順とずれることがあります。下書きができたら、予算の幅とやらないことの2つだけは決裁者に確認してもらってください。この2つは開発会社との話の途中で動くと、提案をすべて取り直すことになります。
作りたいものを、
ひとつだけ持ってきてください。
初回お打ち合わせは60分・オンライン可。画面構成のラフとお見積りまで費用はいただきません。
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