開発会社への最初の一通に、何を書くか ── 返事が早く、具体的になる問い合わせの書き方
2026.10.08 公開
開発会社への問い合わせで、よく見る形がこれです。「システム開発を検討しています。一度お話を伺えますでしょうか」。これだけ。
もちろん返事はします。ただ、この一通に対してこちらが返せるのは日程の候補だけです。何を作りたいのか、誰が使うのか、いつまでに要るのか。何も分からないので、初回の60分は現状を聞くところから始まり、提案は次回に回ります。
逆に、数行書いてあるだけで、最初の返信に「それなら6画面くらいで収まりそうです」「その部分は既存サービスで足りるかもしれません」まで書けることがあります。同じ60分でも中身が変わる。この記事は、その数行に何を書くかの話です。相談の前に社内で決めておくことは開発会社に相談する前に、決めておくと話が早い3つのことに書いたので、ここでは「決まっていなくても、一通目に書けること」に絞ります。
返事が日程調整だけになる文面
作例です。実際に届いた問い合わせではありません。
「株式会社〇〇の田中と申します。
弊社では業務効率化のためのシステム開発を検討しております。
御社の実績を拝見し、ご相談させていただきたくご連絡いたしました。
一度お打ち合わせのお時間をいただけますでしょうか。」
丁寧ですし、失礼な点はひとつもありません。ただ、この文面から分かるのは会社名と担当者名だけです。「業務効率化」が、どの業務の何を指しているのかが分かりません。受注の転記なのか、日報の集計なのか、顧客からの問い合わせ対応なのか。それによって画面の数も、既存サービスで足りるかどうかも変わります。
この文面に対する返信は、どの開発会社でもほぼ同じになります。「ありがとうございます。来週のご都合はいかがでしょうか」。比較するために3社に送っても、3社から同じ返事が来て、比較になりません。
返事が具体的になる文面
同じ会社が、同じ相談を、こう書いたとします。これも作例です。
「株式会社〇〇の田中です。業務用資材の卸で、従業員は20名です。
困っているのは注文の受付です。FAXと電話で1日30件ほど来る注文を、事務2名がExcelに打ち直していて、月に数回、転記ミスで誤出荷が出ています。
使うのは事務2名と倉庫3名、営業4名が一覧を見る想定です。
期限は特にありませんが、来年の繁忙期(3月)の前には使い始めたいと考えています。
予算は社内でまだ決まっていません。初年度300万円を超えると稟議が難しくなります。
いまはExcelの受注表と、Wordで作った出荷指示書を使っています。
相談だけでも可能でしょうか。」
これで7行です。文章の上手さは要りません。この一通で、受け取った側には次のことが分かります。業務は受注で1つに絞れている。使う人が3役割で9名。3月が締め切りなので、逆算すると年内に着手すれば間に合う。予算に上限の感覚がある。いまのツールがExcelとWordなので、データを持ち込める。
ここまで分かると、最初の返信で「受注の登録・一覧・詳細と出荷指示、マスタで7〜8画面、ライトプランの範囲に収まりそうです」「予算感からも、1年の合計が290万円のプランで話ができそうです」と書けます。打ち合わせの前に、方向が出ます。この作例と同じ会社を8画面にした想定は受発注システムの開発費用に置いてあります。
書く順番と、それぞれ一言ずつ
上の作例の並びが、そのまま書く順番です。読む側が「この相談を受けられるか」を判断する順に並んでいます。
1. いま困っている業務を、1つ。 「業務効率化」ではなく「注文の受付」「日報の集計」「見積書の作成」のように、社内で呼んでいる業務名で書きます。困っていることが複数あるなら、いちばん困っているものを1つ。残りは「他にも在庫と請求で困っていますが、まず受注を」と添えれば十分です。どれを先にするか決めかねているなら、選び方は複数の業務があるとき、最初の8週間にどれを入れるかに書いたので、決めてから送る必要はありません。ここが書いてあるだけで、返事の中身が変わります。
2. 使う人数を、役割で。 「社員が使います」ではなく「事務2名が入力、倉庫3名が見る」。人数そのものより役割の数が画面の数を決めるので、受ける側はここから枚数を見積もり始めます。数え方は業務システムの開発費用を、自分で見積もる方法に書いたとおりです。
3. 期限の有無。 あるなら日付と理由を。「3月の繁忙期前」「10月の展示会で見せたい」。ないなら「特にありません」で構いません。ないことが分かるのも情報です。
4. 予算の有無。 決まっていなければ「決まっていません」と書いてください。それでも「これを超えると稟議が通らない」という線があれば、その線だけでも。金額を出すと足元を見られる、と心配される方がいますが、私たちの場合は画面数で料金が決まっているので、予算を聞いても金額は変わりません。変わるのは、その予算で何画面まで入るかという提案の側です。
5. いま使っているツール。 Excel、紙、既存のサービス名、社内システムの名前。これがあると、データを持ち込めるか、連携が要るかが最初から分かります。「Excelです」の一言で十分です。
5つ全部が埋まらなくても送って構いません。1だけでも、何もないよりずっと話が早い。
書かなくていいもの
仕様書は要りません。作ってから来られる方もいますが、初回で作り直しになることが多いので、一通目に添付する必要はありません。
機能の一覧も要りません。「ログイン機能、検索機能、通知機能、CSV出力機能」と並べてあっても、どの業務のためかが書いていないと、こちらは画面に落とせません。機能ではなく業務を書いてください。
スマホアプリにするかWebにするかも、一通目で決まっている必要はありません。業務と使う人が分かれば、受ける側から提案できます。判断が分かれる条件はスマホアプリで作るか、Webで作るかに書きました。
会社の沿革、こちらの実績への言及、丁寧な挨拶の段落。あっても困りませんが、なくても返事は変わりません。書く時間があるなら、1の業務の説明に回したほうが返事が良くなります。
相見積もりであることも、隠さなくて大丈夫です。「3社に同じ内容でご連絡しています」と書いてあるほうが、こちらも返答の粒度を揃えられます。私たちは比較される側なので、それで返事が雑になることはありません。むしろ同じ文面を3社に送って、返ってきた返事の違いを見るのが、開発会社を比較するいちばん早い方法だと思っています。打ち合わせで聞くと差が出る質問は開発会社の選び方に、契約の前に確認しておきたい引き継ぎの条件はその開発会社が続けられなくなったらに書きました。
返事の、どこを見るか
5つを書いて送ると、返事の側に差が出ます。見るところは2つです。
ひとつは、質問が返ってくるかどうか。「取引先ごとに単価は違いますか」「FAXは今後も残りますか」のような、業務に踏み込んだ質問が返ってくる会社は、一通目を読んで画面を想像しています。日程の候補だけ返ってくる会社は、まだ読んでいないか、読んでも判断できない体制です。
もうひとつは、「これは作らなくていいかもしれません」が入っているかどうか。一通目の内容だけで「その部分は既存サービスで足りそうです」と言える会社は、範囲を判断する習慣があります。全部を「できます」と返す会社より、あとで揉めにくい。
ここは会社によって体制が違うので、返事が遅いこと自体を減点にしないほうがいいと思っています。営業担当が受けて技術者に回している会社は、返事に数日かかっても内容が濃いことがあります。
まだ書ける段階でないなら
正直に書くと、1の「困っている業務を1つ」が書けない場合は、問い合わせる前にもう少し社内で見たほうがいい状態です。困っていることが漠然と「全体的に非効率」なら、何を作っても効かない可能性があります。1週間ほど、誰がどの作業に何分使っているかを見てからのほうが、一通目が書けます。
補助金ありきで「何か作りたい」という相談も、私たちには向いていません。理由はシステム開発に使える補助金に書いたとおりで、私たちがIT導入補助金の事業者登録をしていないという事情もあります。
逆に、5つが書けたなら、その内容をそのままお問い合わせに貼っていただければ、最初の返信で方向をお伝えします。初回のお打ち合わせは60分、3営業日以内に画面構成のラフと見積もりをお出しし、ここまで費用はいただきません。上の作例のように「相談だけでも」と書いていただいても、扱いは変わりません。
よくあるご質問
開発会社に問い合わせるとき、仕様書や資料は必要ですか?
一通目には要りません。困っている業務を1つ、使う人数を役割で、期限の有無、予算の有無、いま使っているツール。この5つが数行で書いてあれば、最初の返信で画面数の見込みや、既存サービスで足りるかどうかまでお伝えできます。仕様書を作ってから来られる方もいますが、初回で作り直しになることが多いので、その時間は業務の説明に回したほうが返事の中身が良くなります。いま使っているExcelや紙の帳票は、打ち合わせのときに見せていただければ十分です。
予算が決まっていない場合、問い合わせに何と書けばよいですか?
「決まっていません」とそのまま書いていただいて構いません。それでも「これを超えると稟議が通らない」という線があれば、その線だけでも書いてあると提案の幅が絞れます。金額を出すと足元を見られるのではと心配される方がいますが、ニカゲツの場合は画面数でプランが決まっているので、予算を聞いても金額は変わりません。変わるのは、その予算で何画面まで入るかという提案の側です。
複数の開発会社に同じ文面を送ってもよいですか?
構いません。むしろ「3社に同じ内容でご連絡しています」と書いてあるほうが、受ける側も返答の粒度を揃えられます。同じ文面に対して、業務に踏み込んだ質問が返ってくるか、日程の候補だけが返ってくるか、「その部分は作らなくてよさそうです」が入っているか。返事の違いを並べるのが、開発会社を比較するいちばん早い方法だと考えています。私たちも比較される側なので、相見積もりだと分かって返事が雑になることはありません。
作りたいものを、
ひとつだけ持ってきてください。
初回お打ち合わせは60分・オンライン可。画面構成のラフとお見積りまで費用はいただきません。
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