同じ依頼で見積もりが3倍違うのはなぜか ── 比べる前に揃える4つの前提
2026.10.19 公開
A社が150万円、B社が280万円、C社が450万円。同じ資料を同じ日に3社へ渡して、返ってきた見積もりです。架空の想定例ですが、この程度の差は珍しくありません。「どれが正しいんですか」と聞かれることがありますが、たいていはどれも間違っていません。3社が、それぞれ違うものを見積もっているだけです。
見積もりが人月の単価と人数で積み上がる構造そのものはMVP開発の費用は、何で決まるのかに、相見積もりを1年目の総額で並べる考え方は開発会社の選び方に書きました。この記事では、差がどこから出てくるかを4つに分けて、比べる前に各社へ同じ前提を渡す方法を書きます。
1. 含まれる作業の範囲が違う
見積もりの金額には、画面を作る作業のほかに、いくつもの作業が入ったり入らなかったりします。要件定義、画面のデザイン、テストをどこまでやるか、既存のExcelからのデータ移行、サーバーの用意、導入時の説明、操作マニュアル。上の想定例でいうと、A社の150万円には要件定義とデータ移行が入っておらず、C社の450万円には設計書の作成と過去データの移行まで入っていました。
この差は、見積書が「システム開発一式」と書かれていると見えません。見分ける方法は単純で、作業の一覧を発注側で作って、各社に○と×を付けてもらうことです。×が付いた作業は、あとで誰かがやるか、別の見積もりになります。×の分を足してから並べ直すと、順位が入れ替わることも珍しくありません。
2. 画面や機能の数え方が違う
同じ依頼を読んでも、ある会社は8画面、別の会社は15画面と数えます。一覧と詳細を1枚にするか分けるか。登録と編集を分けるか。管理者用の設定画面を数えるか。スマホ用の画面を別に数えるか。数え方の違いだけで、作る量の見込みは倍近く変わります。
もっと大きいのは、使う人の読み違いです。「取引先からの注文を管理したい」という一文を、社内の事務が入力すると読むか、取引先が自分で入力すると読むか。後者で読んだ会社は、取引先用のログインや発注画面まで見積もりに入れます。どちらが正しいかではなく、依頼文がどちらにも読めたということです。
揃えるには、発注側で画面の一覧を作って渡すのが確実です。数え方は業務システムの開発費用を、自分で見積もる方法の手順1に書きました。自社で数えるのが難しければ、各社に「この見積もりで想定した画面の一覧」を出してもらうだけでも、どこで読み方が分かれたかが見えてきます。
3. リリース後の扱いが違う
見積もりの差がいちばん見えにくいのが、リリースしたあとの扱いです。ある会社は1年分の保守を含めて出し、ある会社は開発費だけを出し、保守は別途としている。サーバーの費用が入っているかどうかも会社ごとに違います。リリース後に項目を1つ足したいときに、毎回見積もりになるのか、月の枠の中でできるのかも分かれます。
初期の金額だけを並べると、リリース後を含めていない会社がいちばん安く見えます。比べるときは、リリース後の12ヶ月に何をしてもらえるのかを揃えて、その分の費用を足してから並べてください。リリース後に毎月何にお金がかかるかは運用・保守の中身を項目ごとにに分けてあります。不具合が見つかったときにどこまで無償で直すかは会社と契約によって違うので、ここは契約書で確認してください。
4. 単価と体制が違う
4つ目が、人の単価と体制です。営業、PM、デザイナー、エンジニア、テスト担当が分かれて関わる会社と、相談した相手がそのまま作る会社では、同じ画面数でも乗ってくる時間が違います。私たちは後者で、下請けも使っていません。
ここは、どちらが良い悪いという話ではありません。人数の多い体制には、担当者が休んでも代わりがいる、大きな案件で役割を分けられる、という利点があり、その分が金額に乗っています。比べるときに聞くのは「この見積もりは、何人が合計で何時間関わる想定ですか」の一言です。総額を総時間で割ると、1時間あたりの単価と、作る作業以外にどれだけの時間が乗っているかが見えます。
比べる前に、同じ前提を渡す
4つの差を見分けるより早いのは、最初から同じ前提を各社に渡すことです。A4で1〜2枚の前提シートを作り、いちばん上に困っている業務と使う人を書いたうえで、次の4つを並べます。
| 揃える前提 | 書くこと | 例(架空の想定例) |
|---|---|---|
| 作業の範囲 | 含めてほしい作業に○、要らない作業に× | 要件定義○、取引先60社のマスタ取り込み○、過去の注文履歴の移行×、操作説明○ |
| 画面の一覧 | 自社で数えた画面名と、使う人 | 注文の登録・一覧・詳細、出荷指示、マスタ2枚、CSV出力。取引先は使わない |
| リリース後 | 何ヶ月分を、何込みで見積もってほしいか | 12ヶ月分。サーバー費用、不具合対応、小さな変更の扱いを分けて書いてほしい |
| 内訳と体制 | 内訳の単位と、人数・総時間の書き方 | 画面ごとか工程ごとの内訳。関わる人数と合計時間を添えてほしい |
渡し方にも決まりを作っておきます。全社に同じ日、同じ文面で渡す。ある会社から質問が来て答えたら、その答えを全社に共有する。片方の会社だけが知っている前提があると、その時点で比べられなくなります。問い合わせの段階で何を書けば返事が具体的になるかは、開発会社への最初の一通に、何を書くかにまとめました。
揃えても違うなら、そこが本当の差
前提を揃えても金額は揃いません。ただ、残った差はもう説明のつく差です。体制の厚さ、確認の進め方、そしてどこまでを作らないと判断したか。
最後のものは特に見てほしいところです。ある会社が「この機能は最初は要らないと思います」と範囲を削って提案してきたなら、それは手抜きではなく、その会社の判断の中身です。その場合は、ほかの会社にも同じ削り方で見積もってもらうと、提案の違いと金額の違いを分けて比べられます。前提シートは、全社を同じ形に押し込むための道具ではなく、違いがどこにあるかを見えるようにするための道具です。
私たちの見積もりは画面数でプランが決まるので、前提シートの画面の一覧がそのまま金額の根拠になります。初回お打ち合わせ(60分・オンライン可)のあと、3営業日以内に画面構成のラフとお見積りをお出しし、ここまで費用はいただきません。他社の見積もりと並べて判断していただいて構いません。ラフが手元に残れば、他社に渡す前提シートの材料にもなります。
よくあるご質問
相見積もりで金額が大きく違うとき、いちばん安い会社を選んでいいですか?
金額だけで選ぶ前に、安い見積もりに何が入っていないかを確かめてください。要件定義やデータ移行、リリース後の保守が入っていない、画面を少なく数えている、といった理由で安く見えていることが多いです。同じ作業の一覧に○と×を付けてもらい、×の部分を足した金額で並べ直すと、順位が入れ替わることも珍しくありません。揃えたうえでなお安いなら、その理由を聞いて納得できれば選んで構いません。
各社に同じ前提を渡すには、何を用意すればいいですか?
A4で1〜2枚の前提シートで足ります。困っている業務と使う人、自社で数えた画面の一覧、含めてほしい作業の範囲、リリース後に何ヶ月分を何込みで見積もってほしいか、内訳と体制の書き方。この4つを同じ日に、同じ文面で全社に渡します。ある会社からの質問に答えたら、その答えも全社に共有してください。片方だけが知っている前提があると、比べられなくなります。
前提を揃えたのに、まだ金額が違うのはなぜですか?
そこで残る差が、本当の違いです。関わる人数と体制、確認の進め方、どこまでを作らないと判断したか。たとえば、ある会社が「この機能は最初は要らない」と範囲を削って提案してきたなら、それは手抜きではなく提案の中身です。その場合は、ほかの会社にも同じ削り方で見積もってもらうと、提案の違いと金額の違いを分けて見られます。
作りたいものを、
ひとつだけ持ってきてください。
初回お打ち合わせは60分・オンライン可。画面構成のラフとお見積りまで費用はいただきません。
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