ノーコードで作るか、開発するか ── kintoneやNotionで済む業務の形と、行き詰まる業務の形
2026.10.09 公開
「kintoneで作れませんか、と社内で言われまして」。相談の場で、この一言が出ることがあります。Notionのこともあれば、Airtableや、Googleフォームとスプレッドシートの組み合わせのこともあります。
私たちの答えは決まっていて、「作れるなら、そのほうがいいです」です。受託で開発している会社が言うことではないかもしれませんが、本当にそう思っています。ノーコードで回る業務を、わざわざ8週間かけて画面に作り直す理由はありません。
問題は、どこまでがノーコードで回って、どこから行き詰まるのかが、始める前には見えにくいことです。この記事は、それを業務の形で書きます。ツールごとの機能比較はしません。料金や件数の上限は年に何度も変わるので、数字も書きません。
先に書きます。ノーコードで済む会社は、うちに頼まなくていい
内製か外注かという話は社内システムは内製か外注かに書きましたが、あれは「誰が作るか」の話です。この記事は「そもそも作るか、既製の道具で組むか」で、軸が違います。
ノーコードの道具は、社内の担当者が自分で組めます。列を足すのも、絞り込みを変えるのも、その日のうちに終わる。開発会社に頼むと、同じことに打ち合わせと見積もりが挟まります。業務の形がまだ動いているうちは、この差が大きい。
だから、次の4つに全部当てはまるなら、ノーコードで組んでください。私たちに相談する必要はありません。
- 使うのが社内の人だけ
- やることが、登録して、一覧で見て、状態を変える、の範囲に収まる
- データの件数が、年に数千件のうちは増えない
- 権限が「部署ごと」「役職ごと」で説明できる
実際、初回の相談でこの4つを確認して、「それなら既製のサービスで足ります」とお伝えして終わることがあります。予約を受けるだけの業務がそうで、その線引きは予約システムの開発費用の後半に書きました。
逆に、この4つのどれかから外れた瞬間に、ノーコードは急に窮屈になります。順に書きます。
形1 ── 社外の人が使う
取引先が注文を入れる。顧客が自分の申込状況を見る。こうなると話が変わります。
ノーコードの道具は、基本的に使う人の数で料金が決まっています。社内20人なら20人分。ここに取引先の担当者が50社分乗ると、その人数分の契約が要るか、社外向けの別の仕組みを足すことになります。金額は書きませんが、月額の桁が変わることがある、とだけ書いておきます。
もうひとつ、社外の人には使い方を説明できません。社内なら「この画面のここを押して」と隣で教えられますが、取引先には教えられない。画面がツールの標準のままだと、問い合わせが電話で来ます。それを避けようと画面を作り込むと、ノーコードの範囲を出ます。
社外の人が触る画面が1つでもあるなら、そこだけは作ったほうが収まりがいい、というのが私たちの見方です。社内側は既製のツールのままにして、社外向けの入口だけ作る、という組み合わせもあります。
形2 ── 画面の見た目が、売上に関わる
予約画面、申込フォーム、会員向けのマイページ。ここで離脱されると売上が減る画面は、ツールのロゴが入った標準の見た目では困ることが多いです。
社内の在庫一覧なら、見た目は二の次です。使う人は毎日触るので慣れます。ただ、初めて来た顧客が、スマホで、30秒で申込を終えられるか。ここはノーコードのフォームで調整できる幅が狭い。
判断は簡単で、「その画面を見る人は、他社の画面と比べているか」です。比べているなら、見た目は売上に関わっています。
形3 ── 件数が増え続ける、計算が絡む
台帳として使っているうちは、ノーコードは強いです。行き詰まるのは、件数と計算の2方向です。
件数のほうは、ツールごとに上限があり、上限の手前で一覧が重くなる領域があります。日次で数百件の入出庫が積み上がる。毎月の請求明細が数千行ずつ増える。こういう業務は1年で数万件になります。どこで重くなるかはツールと契約によって違うので、ここで断定はしません。ただ「年に何件増えるか」を先に計算して、3年分でどこまでいくかを見ておくと、あとで慌てて移行する事態を避けられます。
計算のほうは、在庫の引当、予約枠の重複判定、担当者ごとの売上を月次で締める、といったものです。ノーコードでも一部は計算式や自動化で組めますが、条件分岐が増えるにつれて、担当者しか読めない設定の塊になります。Excelのマクロと同じ構図で、その話はExcelでの管理は、どこまでが限界かのサイン4に書きました。
地味ですが、ここが一番あとから効きます。
形4 ── 権限が「この人は、この行だけ」になる
部署ごと、役職ごとの権限は、どのツールにもあります。行き詰まるのは、権限がレコード単位になったときです。
営業担当は自分の取引先の分だけ見える。取引先の担当者は自社の注文だけ見える。承認者は自分の部下の申請だけ通せる。こういう「誰が・どの行を・何できるか」が入り組んでくると、ノーコードでは設定が追いつかないか、追いついても管理者しか把握できない状態になります。
ここは会社によって違うので断定できません。同じ「取引先ごとに見せる範囲を変える」でも、ツールの標準機能で収まる場合と、収まらない場合があります。判断するときは、権限の組み合わせを紙に書き出してください。表が3行で終わるなら大丈夫です。10行を超えたら、開発の相談をする段階です。
ノーコードで半年回してから、作り直す順番もある
4つのどれかに当てはまっても、いきなり開発を勧めるわけではありません。
業務の形がまだ固まっていないなら、先にノーコードで半年回すほうが、結果的に速いことがあります。回してみると「この項目は誰も入れない」「この状態は実際には起きない」が分かる。それを踏まえて画面を作ると、最初から作るより画面が減ります。
移行のときに困らないように、ひとつだけ守ってほしいことがあります。CSVで全件を出せる状態を保つことです。ノーコードの道具はたいてい出せますが、添付ファイルや、他のテーブルへの参照は崩れやすい。半年後に移すつもりなら、参照の張り方を単純にしておくと手間が減ります。移行で実際に時間がかかる場所は既存システムから乗り換えるときに書いたとおりで、ノーコードからの移行でも同じ場所で止まります。
逆の順番もあります。作ったシステムの周辺で、ノーコードを併用する形です。社外向けの注文画面は作り、社内の細かい集計はスプレッドシートに出して回す。私たちが標準でCSV出力を付けているのは、この形を想定しているからです。
迷ったら、私たちはこう答えます
初回の相談で、ノーコードで足りるかどうかを一緒に見ます。4つの形のどれにも当たらなければ、そう言います。受託の会社としては損な答えですが、半年後に「やっぱりノーコードでよかった」となるより、最初に言ったほうがお互いに早い。
社外の人が使う画面があるとか、権限の表が10行を超えるとかで開発になった場合は、画面を数えるところから始めます。数え方は業務システムの開発費用を、自分で見積もる方法に手順を書きました。何画面になるかの例は作れるものの例にあります。
ひとつ補足しておくと、私たちが受けているのは、Next.jsなどで画面を作る仕事です。kintoneやNotionの設定を組む仕事は、各ツールの導入支援をしている会社のほうが慣れています。ノーコードで行く判断になったら、その先はそちらか、社内の担当者に渡すのがいいと思います。それでも、どちらで行くかを決める最初の60分には使っていただいて構いません。
よくあるご質問
kintoneやNotionで作ったものを、あとから開発に移せますか?
データは移せることが多いです。どのツールもCSVで全件を出せるので、それを初期データとして取り込みます。崩れやすいのは添付ファイルと、他のテーブルへの参照です。画面はそのままは移らず、作り直しになります。ただ、半年運用した結果として「誰も入れない項目」「実際には起きない状態」が分かっているので、最初から作るより画面数が減ることが多いです。移す前提なら、参照の張り方を単純にしておくと手間が減ります。
ノーコードと開発を組み合わせることはできますか?
できます。実際によく選ばれるのは、社外の人が触る入口だけを作り、社内側の細かい集計はスプレッドシートやkintoneで続ける形です。私たちが標準でCSV出力を付けているのは、この形を想定しているためです。ツールどうしを自動で同期する連携は初期費用には含めていないので、まずはファイルの受け渡しで回し、頻度が高くなってから月額の改善枠で連携を足すかを判断します。
ノーコードで十分かどうかだけ、相談できますか?
できます。初回のお打ち合わせは60分・オンライン可で、ここまで費用はいただきません。この記事に書いた4つの形に当たらなければ、既製のツールで組んだほうがいいとお伝えします。その場合、設定を組むのは各ツールの導入支援をしている会社か社内の担当者の仕事になりますが、どちらで行くかを決めるための60分として使っていただいて構いません。
作りたいものを、
ひとつだけ持ってきてください。
初回お打ち合わせは60分・オンライン可。画面構成のラフとお見積りまで費用はいただきません。
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